「恐竜王国」の福井県には、もう一つの顔がある。「かるた王国」だ。かるた教育が小中学校で盛んで、2016年度から3期名人を守った川崎文義ら多くの一流選手が輩出している。そんな王国の人々の心を、わしづかみにしている漫画がある。とどまることなく進化する「聖地」、日本海に臨むあわら市を訪ねた。
競技かるたを題材にした末次由紀さんの人気漫画「ちはやふる」は、クイーンを目指す女子高生、綾瀬千早と仲間の青春を描く。あわら市は、名人を目指す綿谷新(あらた)が住む街。小学校のとき、転校先で出会った千早にかるたの魅力を教えた。冷静沈着だが、内には熱い思いを秘める主要キャラだ。
「小学生はかるたが好きな姿に共感できる。年が上がると恋愛要素もいい。親世代にとっては、子どもの成長を見守る大人たちの姿が魅力」
作品の見どころを余すところなく語るのは、嵯峨直美さん(53)。現在の同県坂井市で生まれ育ち、小学生時代、雪に閉ざされる冬場はかるたに熱中した。7年ほど前、「あわらが舞台の漫画がある」と聞き、図書館で単行本第1巻を借りて読んだ。
講談社の当時の担当編集者によると、末次さんは連載準備中や連載中にたびたびあわら市に足を運んだ。新が所属するかるた会のモデルとなった団体の練習を熱心に取材。さらに、街並みだけでなく、空気、北陸の冬ならではの曇天を肌で感じたという。あわら市を舞台とした理由について、末次さんは「担当編集者の出身があわら市で、小さい頃一生懸命かるたを取る写真を見せてもらい、決めた」と明かした。
拡大する「スノー丸どら焼き」を手に取る嵯峨直美さん。左後ろにあるのは末次由紀さん描き下ろしの「『こんがり』スノー丸」=2020年12月10日、福井県あわら市市姫2丁目
そうして丁寧に描かれた作品の大ファンになった嵯峨さんだが、それで終わらなかった。作品には、対戦時の差し入れなどで、たくさんお菓子が出る。きんつば、おはぎ、まんじゅう――。そして、嵯峨さんは、夫と創業45年の和菓子店「甘党本陣 嵯峨」(同市市姫2丁目)を営んでいた。
特に気に入ったのが、ちょんま…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル